「コーチングを学んだけれど、お金をいただくところまで進めない」。
コーチングを仕事にしたい人の多くが、この「最初の1人」の手前で止まっています。
止まる理由は、スキル不足より「誰に、何を、いくらで、どう声をかけるか」が決まっていないことにあります。
ホームページやSNSの発信を整える前に、やることは意外とシンプルです。
この記事では、副業から始めて最初の1人の有料クライアントを得るまでを、5つのステップの手順書として整理します。
コーチング起業そのものの考え方や全体像は、コーチング起業とは?初心者が失敗しないための方法で紹介しています。
この記事は、その中でも「最初の1人」にだけ絞った実践編です。
・有料にする前に練習セッションを重ね、相手が悩みを語る「言葉」を集める
・メニューは1つだけ。回数・期間・ゴールが一文で言えるコースにする
・最初の1人は発信より、知り合いへの直接の声かけと紹介から生まれやすい
最初の1人までの道のりは、次の5ステップです。
- 誰の、どんな悩みを聴くかを決める
- 練習セッションで「言葉」を集める
- 有料メニューを1つだけ作る
- 知り合いに直接声をかける
- 体験セッションから申込みにつなげる
順番に見ていきましょう。
ステップ1:誰の、どんな悩みを聴くかを決める

最初に決めるのは、技法でも価格でもなく「誰の役に立つコーチなのか」です。
「どなたでもお話を聴きます」というコーチは、聞いた人が自分ごとにできません。
知り合いに紹介をお願いしても、「誰を紹介すればいいのか分からない」と言われてしまいます。
逆に相手が絞れていると、聞いた人の頭に「あの人のことだ」と顔が浮かびます。
3つの問いで相手を絞る
相手は、次の3つの問いに答えるだけで絞れます。
- 誰が:どんな立場・状況の人か
- どんな場面で:どんなときに困っているか
- どうなりたいか:困りごとが解けたら、どんな状態になっていたいか
答えを考えるときは、自分の経験から探すのが近道です。
自分が通ってきた道にいる人の悩みは、言葉の細かいニュアンスまで分かるからです。
| 比べる点 | 広い言い方 | 絞った言い方 |
| 誰が | 悩んでいる社会人 | 初めて部下を持った係長・リーダー |
| どんな場面で | 仕事がうまくいかないとき | 1on1で何を話せばいいか分からず、毎回業務確認で終わるとき |
| どうなりたいか | 前向きになりたい | 自分の言葉で部下と話し、相談される上司になりたい |
右の列のように書けると、紹介する人も「そういえば、うちの課の○○さんが悩んでいた」と思い出せます。
明日やること
ノートに「誰が」「どんな場面で」「どうなりたいか」を1行ずつ書いてみてください。
迷ったら、3年前の自分に向けて書くと決めやすくなります。
・一度決めた相手は、練習セッションの反応を見て直してよい
ステップ2:練習セッションで「言葉」を集める
有料にする前に、ステップ1で決めた相手に近い人と、無料の練習セッションを重ねます。
目的は腕試しではありません。
相手が自分の悩みを、どんな言葉で話すのかを集めることです。
コーチが頭の中で考えた言い回しより、本人が口にした言葉のほうが、あとでメニューや声かけに使ったときに相手に届きます。
練習相手への頼み方
練習相手には、正直に「練習させてほしい」と頼んで大丈夫です。
例えば、次のように声をかけます。
もしよければ、45分ほど練習相手になってもらえませんか。
お代はいただきません。終わったあとに、率直な感想を聞かせてもらえるとうれしいです」
人数の目安は、5〜10人ほどです。
回数を重ねるうちに、多くの人が口にする悩みや、セッションの中で表情が変わる質問が見えてきます。
終わったあとに聞く3つの質問
練習セッションの最後に、次の3つを聞いてメモしておきましょう。
- 今日いちばん役に立ったのは何でしたか:自分の強みが分かる
- 受ける前は、どんなことで迷っていましたか:メニューの紹介文に使える
- 人にすすめるとしたら、どう説明しますか:紹介をお願いするときの言葉になる
感想を紹介文やSNSで使いたい場合は、その場で「お名前を出さずに使わせてもらってもいいですか」と許可を取っておきます。
セッションの基本の流れに不安がある場合は、この段階で型を固めておくと、有料のセッションでも落ち着いて進められます。
ステップ3:有料メニューを1つだけ作る

メニューは1つだけ、それも回数と期間が決まったコースにするのがおすすめです。
メニューが多いと、相手はどれを選べばいいか迷い、結局「また今度」になります。
また、1回きりの単発セッションは、相手に変化が出る前に終わってしまうことが少なくありません。
コーチングは、話して決めたことを日常で試し、次のセッションで振り返るところに価値があるからです。
メニューで決める4つのこと
| 決めること | 決め方の例 |
| 対象 | ステップ1で決めた相手をそのまま書く(例:初めて部下を持った係長・リーダー) |
| ゴール | 練習で集めた言葉を使い、終わったときの状態を一文で書く(例:自分の言葉で1on1を進められる) |
| 回数と期間 | 変化を試して振り返れる長さにする(例:月2回・3か月) |
| 価格と支払い方法 | 自分が続けられる時間と、相手が得るものの大きさから決める。支払い方法と時期も先に決める |
価格の決め方
最初の価格で迷う人は多いですが、安くしすぎないことが大切です。
極端に安い価格は「本気で取り組むコース」ではなく「気軽なお試し」に見え、相手も行動を変えにくくなります。
モニター価格にする場合は「最初の3名まで」「感想をいただける方」のように、人数と条件を区切っておきましょう。
個人セッション以外の収益の形を知りたい場合は、コーチングビジネスモデル4選も参考になります。
メニュー紹介文の例
紹介文は、長い説明より、相手が自分のことだと分かる3〜4行が使いやすいです。
月2回・3か月のオンラインセッションで、部下に聞きたいことを一緒に言葉にしていきます。
終わるころには、台本に頼らず自分の言葉で1on1を進められる状態を目指します。
「何でも相談できます」と書くより、「こういう人の、この悩みに付き合います」と書くほうが、申し込む側は安心できます。
ステップ4:知り合いに直接声をかける
最初の1人は、SNSで見つけてくれた知らない人より、あなたを知っている人や、その紹介から生まれやすいものです。
知らない人が、実績のまだないコーチにお金を払うのは、ハードルが高いからです。
発信を整えるのは大切ですが、最初の1人の段階では「直接の声かけ」が先です。
声をかける相手を書き出す
スマートフォンの連絡先やSNSのつながりを見ながら、次の2種類の人を書き出します。
- ステップ1の相手に当てはまる人:本人が悩みを抱えていそうな人
- その相手を知っていそうな人:職場の先輩、同業の知人、地域や趣味の仲間など
20人ほど書き出せば、その中から自然に連絡できる人が見えてきます。
売り込まない声かけの例
声をかけるときは、「申し込んでください」ではなく、「始めたことを知ってほしい」「周りにいたら教えてほしい」と伝えるのがコツです。
初めて部下を持って、1on1に悩んでいる人の話を聴いています。
もし周りにそういう方がいたら、思い出してもらえるとうれしいです。
○○さん自身も、興味があれば30分ほどお試しで話してみませんか」
この声かけには、ステップ2で集めた「人にすすめるならこう説明する」という言葉がそのまま使えます。
反対に、申込みページのリンクだけを送る、同じ文面を一斉に送るといったやり方は、相手に「営業された」と感じさせやすいので避けましょう。
SNSは「名刺」として整える
声をかけた相手は、ほぼ必ずあなたのSNSやプロフィールを見に来ます。
そのときに「誰の、どんな悩みに付き合うコーチか」が1行で分かるようにしておけば十分です。
本格的な集客の仕組みづくりは、最初の1人が決まってからでも遅くありません。
集客の基本から応用までは、売れるコーチになる!集客の基本から応用までで詳しく解説しています。
ステップ5:体験セッションから申込みにつなげる

体験セッションは、コーチングを体験してもらうだけで終わらせず、最後に「続けるかどうか」を本人に選んでもらう時間まで含めて設計します。
案内の時間を取らずに終えると、相手は「よかった」と感じても、続け方が分からないまま日常に戻ってしまいます。
押し売りにならないためにも、案内は「決めるのはあなた」という前提で、短く具体的に伝えます。
体験セッションの流れ
60分の体験セッションなら、次のような流れが進めやすいでしょう。
| 流れ | やること |
| ① 悩みを聴く | 今日話したいことと、いま困っている場面を聴く |
| ② ありたい姿を言葉に | 悩みが解けたらどうなっていたいかを、本人の言葉で話してもらう |
| ③ 次の一歩を決める | 明日から試せる小さな行動を1つ決める |
| ④ 続け方を案内 | コースの回数・期間・料金を、紹介文に沿って短く伝える |
| ⑤ 本人が決める | 続けるか、今回で終えるかを本人に選んでもらう |
時間の配分は、①〜③のセッション部分に40分ほど、④と⑤の案内に10〜15分ほどを残しておくと、慌てずに話せます。
案内の会話例
案内の場面は、たとえば次のように進めます。
相手:「頭の中が整理されました。でも、実際にやってみたらまた迷いそうです」
コーチ:「そこを一緒に振り返るのが、月2回・3か月のコースです。試して、振り返って、また試す、をくり返します。料金は○円です」
コーチ:「続けるかどうかは、○○さんが決めてください。今日で終えるのも、もちろん大丈夫です」
相手が迷っている場合は、その場で決めてもらう必要はありません。
「何が気になっていますか」と一度だけ聞き、時間・費用・効果のどれが引っかかっているかを確かめると、次の案内がしやすくなります。
申込みが決まったら書面で残す
申込みが決まったら、口約束で始めず、内容を書面やメールで残しておきましょう。
- 回数・期間・1回の時間
- 料金と支払い方法・支払い時期
- 日程変更とキャンセルの決まり
- 話した内容を外に出さないこと(守秘)
知り合いが相手でも、ここを先に決めておくと、お互いに気持ちよく続けられます。
・案内は短く、決めるのは本人。断られたら感想を聞いて、次のメニュー改善に生かす
よくある質問
会社員でも、副業としてコーチングを始めて大丈夫ですか?
まずは勤務先の就業規則で、副業の扱いを確認してください。
副業を認めている会社でも、届け出が必要な場合や、同業での副業を制限している場合があります。
また、副業で得た所得は確定申告が必要になる場合があるため、始める前に税務署や税理士に確認しておくと安心です。
資格がないと、お金をいただいてはいけませんか?
コーチングの資格は民間の資格で、資格がないとできない仕事ではありません。
ただし、資格の有無にかかわらず、相手に何ができて何ができないかを正直に伝えることは大切です。
心身の不調など、コーチングの範囲を超える相談を受けたときは、医療機関などの専門家につなぐという線引きも決めておきましょう。
練習相手が見つかりません。どうすればいいですか?
一緒に学んでいる仲間と、お互いに練習相手になるのが始めやすい方法です。
そのうえで、ステップ1で決めた相手に近い知人へ、短い時間から声をかけてみてください。
「30分だけ」「オンラインで」と負担を小さくすると、引き受けてもらいやすくなります。
最初の価格は、いくらにすればいいですか?
決まった正解はありませんが、「自分が無理なく続けられる時間」と「相手が得るものの大きさ」の両方から考えます。
迷う場合は、人数と条件を区切ったモニター価格から始め、感想と申込みの反応を見て見直す方法もあります。
大切なのは、価格を言うときに自分が迷わないことです。
最初の1人が決まったら、次は何をすればいいですか?
まずは、その1人とのセッションを最後まで丁寧にやり切ることです。
コースが終わるころに感想をもらい、掲載の許可を取り、紹介をお願いできるか聞いてみましょう。
2人目以降は、その感想と紹介を土台に、発信や集客の仕組みを少しずつ整えていきます。
まとめ:最初の1人は「決めて、声をかける」ことから
コーチングを仕事にする最初の壁は、スキルより「誰に、何を、いくらで、どう声をかけるか」を決めることです。
相手を絞り、練習で言葉を集め、メニューを1つに絞って、知り合いに直接声をかける。
そして体験セッションの最後に、続けるかどうかを本人に選んでもらう。
この5ステップを一つずつ進めれば、最初の1人の有料クライアントは現実的な目標になります。
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