コラム

マネージャー育成研修の選び方|「明日から変わる」研修を見分ける5つの視点

「管理職研修をやったのに、現場が何も変わらない」。

人事の方からいちばんよく聞くのが、この悩みです。

研修当日の満足度は高く、アンケートには「勉強になった」と並ぶ。

それなのに1か月後、部下への接し方は研修前とほとんど同じ、ということは珍しくありません。

原因の多くは、受講者のやる気ではなく「研修の中身」と「研修後の仕組み」の選び方にあります。

この記事では、マネージャー育成研修を選ぶときに見るべき5つの視点と、研修会社に問い合わせるときにそのまま使える質問リスト、研修の前後で人事がやっておくことを整理します。

この記事の要点・傾聴やGROWモデルの座学だけでは、管理職の行動は変わりにくい
・効くのは「部下から見た自分を知る」「伝え方・褒め方・注意の仕方」「任せ方」「1on1の回し方」など、明日の行動が変わる中身
・研修当日で終わらず、現場での実践と振り返りが続く仕組みがあるかで差がつく
・選ぶときは「何を教えるか」より「受講後に何が変わったかをどう確かめるか」を研修会社に聞く

1. 管理職研修で現場が変わらない3つの理由

研修で現場が変わらないのは、知識を渡すところで研修が終わっているからです。

管理職の悩みは「知らない」ことより「分かっているのに、その場でできない」ことにあります。

部下が報告を遅らせたとき、どう声をかけるか。

任せた仕事が期待どおりに上がってこなかったとき、どこまで口を出すか。

こうした場面は、理屈を覚えただけでは乗り切れません。

  1. 中身が座学に寄っている:傾聴やGROWモデルの説明は分かりやすいが、自分の職場の場面に置き換える時間がない
  2. 「部下からどう見えているか」が抜けている:上司が思う自分と、部下が見ている上司がずれたまま、話し方のテクニックだけを足している
  3. 研修当日がゴールになっている:受講後に試す場も、うまくいかなかったことを振り返る場もない

たとえば、傾聴の研修を受けた課長が、翌週の1on1で部下の話を最後まで聴こうとしたとします。

ところが部下は「急にどうしたんだろう」と身構え、いつもどおり当たり障りのない報告で終わってしまう。

課長は「やっぱり現場では使えない」と感じ、元のやり方に戻ります。

この課長に足りなかったのは傾聴の知識ではなく、部下が自分をどう見ているかという前提と、うまくいかなかった1回を振り返る相手です。

管理職がコーチングの考え方を身につける入口としては、管理職のためのコーチング入門もあわせて読んでみてください。

2. 「明日から変わる」研修を見分ける5つの視点

マネージャー育成研修を見分ける5つの視点(部下から見た自分、伝え方・褒め方、任せ方、1on1の回し方、実践と振り返り)を5枚のカードで示した図

良い研修かどうかは、受講した翌日に管理職の「言うこと」と「やること」が1つでも変わるかで見分けられます。

そのために、研修の中身と仕組みを次の5つの視点で確かめてください。

視点① 部下から見た自分を知る時間があるか

最初に確かめたいのは、管理職が「部下から見た自分」を知る仕掛けがあるかどうかです。

多くの上司は「自分は話しやすい上司だ」「任せているつもりだ」と思っています。

一方で部下は「忙しそうで声をかけにくい」「任せると言いながら途中で口を出される」と感じていることがあります。

このずれを知らないまま話し方の型だけを足しても、部下には響きません。

事前に部下へ簡単なアンケートをとる、360度フィードバックの結果を使うなど、研修の中で「上司が思う自分」と「部下が見ている自分」を並べて見る時間があるかを確認しましょう。

視点② 伝え方・褒め方・注意の仕方を練習するか

2つ目は、聴き方だけでなく「伝え方」まで扱っているかです。

管理職研修というと傾聴が中心になりがちですが、現場で困るのは、むしろ伝える場面です。

「頑張ってるね」では何を続ければいいかが部下に伝わりません。

「昨日の資料、結論を1枚目に置いてくれたから会議が10分早く終わったよ」と、行動と結果をセットで伝えると、部下は次も同じことをしようと思えます。

注意の仕方も同じです。

人柄ではなく行動を指して、「次はどうするか」を一緒に決めるところまでが1セットです。

こうした言い回しを、自分の部下を思い浮かべながら実際に口に出して練習する時間があるかを見てください。

視点③ 任せ方を具体的に扱うか

3つ目は「任せ方」です。

プレイングマネージャーが多い会社では、管理職が仕事を抱え込み、部下が育たないという悩みがよくあります。

任せられない上司の多くは、任せる気がないのではなく、任せ方の手順を持っていません。

何を任せるか、どこまでを部下の判断に委ねるか、途中で確認するのはいつか、うまくいかなかったときにどう引き取るか。

この手順を、受講者が実際に抱えている仕事を題材にして決めるところまでやる研修は、翌日からの行動が変わりやすくなります。

視点④ 1on1の回し方まで落とし込むか

4つ目は、1on1の進め方まで具体的に落とし込んでいるかです。

1on1を制度として入れていても、「何を話せばいいか分からない」「結局、進捗確認になる」という声は多く聞かれます。

最初の5分で何を聞くか、部下が黙ったときにどう待つか、最後に何を決めて終えるか。

1回30分の流れを型として持ち帰れる研修であれば、翌週の1on1から試せます。

1on1の基本の流れは、1on1ミーティングの進め方(無料テンプレ付)でも紹介しています。

視点⑤ 研修後に実践と振り返りが続くか

5つ目が、最も差がつくポイントです。

研修の後に「現場で試す→うまくいかなかったことを振り返る→また試す」が続く仕組みがあるかを確かめてください。

1日の研修だけでは、学んだことを試す前に日常業務に飲み込まれてしまいます。

研修の最後に「来週の1on1で1つだけ試すこと」を決め、数週間後に振り返りの場を設ける。

あるいは、研修後の一定期間、コーチが個別に伴走して実践を振り返る。

こうした仕組みが研修の設計に最初から入っているかどうかで、効果は大きく変わります。

POINT・①〜④は「研修の中身」、⑤は「研修後の仕組み」
・中身が良くても⑤がなければ、行動は元に戻りやすい
・逆に⑤があれば、受講者は自分の職場の場面で学び直すことができる

3. 研修会社に問い合わせるときに聞く10の質問

当日で終わる研修と翌日から変わる研修の違いを左右のパネルで比較し、研修会社に聞くべき点を示した図

研修会社を比べるときは、パンフレットのカリキュラムより、問い合わせの場で聞いた答えのほうが判断材料になります。

次の10の質問を、そのまま使ってください。

答えが具体的かどうか、自社の状況を聞き返してくるかどうかにも注目すると、研修会社の姿勢が見えてきます。

聞く質問 答えで確かめたいこと
① 研修の前に、受講者や部下から何を聞きますか? 自社の課題に合わせて中身を変えるつもりがあるか
② 部下から見た上司の姿を知る仕掛けはありますか? 部下アンケートや360度フィードバックを使う設計があるか
③ 講義と演習の時間配分はどのくらいですか? 聞くだけでなく、口に出して練習する時間が十分にあるか
④ 演習の題材は何を使いますか? 一般的な事例ではなく、受講者が実際に抱えている部下や仕事を扱えるか
⑤ 伝え方・褒め方・注意の仕方は扱いますか? 傾聴だけで終わらないか
⑥ 任せ方や1on1の進め方は、どこまで具体的に扱いますか? 翌週から使える手順や型を持ち帰れるか
⑦ 研修が終わった後、何が続きますか? 実践→振り返りの場や、個別の伴走があるか
⑧ 受講後の変化を、何で確かめますか? 満足度アンケートだけでなく、行動の変化を見る方法があるか
⑨ 講師は、どんな現場経験を持っていますか? 管理職の悩みを自分の経験として語れる人か
⑩ 人事や経営者には、何を共有してもらえますか? 個人を特定せずに、組織としての傾向を返してもらえるか

特に⑦と⑧は、答えに詰まる研修会社も少なくありません。

「研修後は受講者の皆さまの努力次第です」という答えであれば、研修当日がゴールになっている可能性があります。

研修の効果を考えるときには、カークパトリックの4段階評価(反応・学習・行動・結果)という考え方がよく使われます。

満足度アンケートで分かるのは最初の「反応」までです。

現場を変えたいのであれば、3段階目の「行動」が変わったかを確かめる方法を、研修会社と一緒に決めておきましょう。

4. 研修の前後で人事がやっておくこと

研修の前・当日・後に人事がやることを3つのカードと矢印で示したフロー図

研修の効果は、研修会社選びだけでなく、人事の段取りでも大きく変わります。

研修の前・当日・後に分けて、やっておきたいことを整理します。

研修の前:目的を1文にし、部下の声を集める

まず「この研修で、管理職の何が変わればいいか」を1文で決めます。

「1on1が進捗確認で終わらず、部下が自分から相談してくるようになる」のように、行動の言葉で書くのがコツです。

あわせて、部下に「上司にもっとこうしてほしいこと」を匿名で聞いておくと、研修で使える生の材料になります。

受講者には「評価のための研修ではない」ことを事前に伝えておくと、当日の本音が出やすくなります。

研修の当日:「来週試すこと」を1つ決めて終える

研修の終わりに、受講者一人ひとりが「来週の1on1で試すこと」を1つだけ決めるようにします。

欲張って5つ決めると、どれも試されないまま終わりがちです。

「部下の報告を最後まで遮らずに聴く」「褒めるときは行動と結果をセットで伝える」くらいの小ささで十分です。

研修の後:振り返りの場を予定に入れておく

研修の2〜4週間後に、試してみてどうだったかを話す場をあらかじめ予定に入れておきます。

うまくいかなかった話こそ、次の行動を変える材料になります。

社内に振り返りの相手がいない場合は、外部のコーチに個別の振り返りを任せるのも一つの方法です。

上司の育成と並行して部下の側を支える方法としては、1on1を外部のコーチに任せるという選択肢でも整理しています。

時期 人事がやること 受講者がやること
研修の前 目的を1文で決める。部下の声を匿名で集める いま困っている部下との場面を1つ思い浮かべておく
研修の当日 「評価のためではない」ことを改めて伝える 来週の1on1で試すことを1つ決める
研修の後 2〜4週間後に振り返りの場を予定に入れる 試した結果と、うまくいかなかったことを持ち寄る

なお、研修の内容や実施の形によっては、人材開発支援助成金などの対象になり得ます。

対象になるかどうかや申請の要件は、事前に管轄の労働局で確認してください。

よくある質問

管理職研修は、1日の集合研修では効果がありませんか?

1日の研修にも、考え方をそろえる、同じ立場の管理職同士で悩みを共有するといった意味があります。

ただ、行動を変えるところまで求めるなら、研修後に実践と振り返りが続く仕組みを組み合わせるのがおすすめです。

研修当日を「始まり」として設計しているかどうかを確かめてください。

傾聴やGROWモデルを学ぶ研修は不要ですか?

不要ではありません。

聴き方や問いかけの型は、1on1や面談の土台になります。

大切なのは、それを座学で終わらせず、自分の部下との場面に置き換えて練習し、伝え方や任せ方とあわせて使えるようにすることです。

コーチングを組織で使う考え方は、ビジネスコーチングとは?でも紹介しています。

研修の効果は、何で測ればいいですか?

満足度アンケートに加えて、行動の変化を見る方法を決めておくのがおすすめです。

たとえば、研修の前と数か月後に同じ内容の部下アンケートをとり、「上司に相談しやすいか」「褒められたときに何が良かったか分かるか」などの項目を比べる方法があります。

何を見るかは、研修の前に決めた「目的の1文」とそろえてください。

オンラインの研修でも、行動は変わりますか?

オンラインでも十分に行えます。

少人数に分かれて言い回しを練習する、研修後に個別の振り返りを短い時間で重ねるなど、オンラインのほうが続けやすい形もあります。

拠点が分かれている会社や、管理職が忙しくて丸1日を空けにくい会社では、むしろ向いていることも多いです。

まとめ:研修は「当日」ではなく「翌日」で選ぶ

マネージャー育成研修を選ぶときは、「研修の翌日に、管理職の何が変わるか」を基準にしてみてください。

部下から見た自分を知り、伝え方・褒め方・注意の仕方、任せ方、1on1の回し方を自分の職場の場面で練習する。

そして研修の後も、試して、振り返って、また試す流れが続く。

この2つがそろった研修であれば、受講した管理職の行動は少しずつ、でも確実に変わっていきます。

FIRST COACHでは、管理職向けの1on1研修やコーチング研修を、組織の状況に合わせてご相談いただけます。

「うちの管理職にはどんな中身が合うか」「研修後の振り返りをどう組めばいいか」といったところから、無料相談でお気軽にお問い合わせください。

超実践的なコーチングスキルを業界最安値で学べるオンラインスクール FIRST COACH

この記事の編集者
加藤 巧海
加藤 巧海(かとう たくみ)
株式会社FIRST COACH 代表取締役。認定プロコーチ。エグゼクティブ・コーチングを中心に、個人と組織のリーダーシップを高める支援をしている。
プロフィールを見る

2つの無料体験で
コーチングの世界に触れてみよう!