「最近どう?」「特にないです」。
「何か困っていることは?」「大丈夫です」。
1on1を始めて数か月たつと、こんなやり取りだけで15分が過ぎてしまうことは珍しくありません。
上司は「話すことがないなら、やる意味があるのだろうか」と感じ始めます。
部下は部下で「何か話さなければ」と身構え、1on1の予定を少し重たく感じるようになります。
けれども、話すことがないのは、部下に話題がないからではありません。
上司の質問が、部下が答えやすい入口になっていないことが原因です。
この記事では、1on1で話すことがなくなる理由と、話題を広げる4つの入口、そのまま使える場面別の30問、そして沈黙が生まれたときの扱い方を、会話例と一緒に紹介します。
・話題は「近況・今の仕事・成長・関係」の4つの入口から選ぶと広がりやすい
・質問は大きく聞かず、「いつ」「どの場面で」と小さく具体的に聞く
・沈黙は失敗ではなく、部下が考えている時間。上司は急いで埋めずに待つ
1. 1on1で話すことがなくなる3つの理由

1on1で話すことがなくなるのには、はっきりした理由があります。
多くの場合、部下の側ではなく、1on1の組み立て方の側に原因があります。
- 質問が大きすぎる:「最近どう?」「何かある?」は、答える範囲が広すぎて答えにくい
- 進捗確認の場になっている:仕事の報告で終わり、報告することがない週は話題がなくなる
- 話したことが何も変わらない:前に話したことが流され、部下が話す意味を感じなくなっている
「最近どう?」は答える範囲が広すぎる
「最近どう?」と聞かれた部下は、仕事のことか、体調のことか、家のことか、何を答えればいいのかを自分で決めなければなりません。
範囲が広い質問ほど、人は一番無難な「特にないです」を選びます。
話題がないのではなく、どこから話せばいいのかが分からないのです。
「今週一番時間を取られた仕事は何だった?」と範囲を絞ると、部下は具体的な場面を思い出しながら答えられます。
進捗確認だけでは、報告がない週に止まる
1on1が「今の案件はどうなっている?」から始まり、報告で終わっていると、報告することがない週は話題がなくなります。
進捗の確認は、普段の会議やチャットでもできます。
1on1は、普段の業務では話しにくいこと、たとえば迷っていることや、これからやってみたいことを話す時間です。
1on1は部下のための時間であり、上司が状況を把握するための時間ではありません。
話しても何も変わらないと、部下は話さなくなる
前回の1on1で部下が「会議が多くて作業の時間が取れない」と話したのに、その後何も変わらなかったとします。
部下は「言っても変わらない」と感じ、次からは同じ話をしなくなります。
1on1の冒頭で「前回話していた会議の件、少しは減った?」と前回の続きを聞くだけでも、部下は「聞いてもらえている」と感じられます。
2. 話題を広げる4つの入口

話すことがないと感じたら、次の4つの入口のどれから入るかを決めてから質問します。
毎回すべてを話す必要はなく、その日の部下の様子を見て1つか2つを選べば十分です。
| 入口 | 話す中身 | 最初の一問の例 |
| 近況 | 体調・気分・仕事以外のこと | 「今週を天気で言うと、どんな感じ?」 |
| 今の仕事 | 手応え・困りごと・迷い | 「今週一番時間を取られた仕事は何だった?」 |
| 成長 | できるようになったこと・これからやりたいこと | 「半年前の自分と比べて、できるようになったことは?」 |
| 関係 | チームや上司との関わり方 | 「私の関わり方で、もっとこうしてほしいことはある?」 |
入口を決めておくと、上司が話題に困ることも減ります。
部下が答えにくそうにしていたら、別の入口に移ればいいだけです。
1on1全体の時間配分や進め方の型は、1on1ミーティングの進め方|コーチングを活用した会話の技術で紹介しています。
3. そのまま使える場面別の質問30問

ここからは、場面ごとにそのまま使える質問を5問ずつ紹介します。
全部を一度に使う必要はありません。
その日の1on1で使うものを1〜2問だけ選び、答えが出たら「それはどうして?」「具体的には?」と深めていくほうが、会話は広がります。
場面1:始まりの空気をほぐしたいとき(近況)
- 今週を天気で言うと、晴れ・くもり・雨のどれに近い?
- 今週、ちょっとうれしかったことは何かあった?
- 最近、仕事以外で時間を使っていることは?
- 今日の体調と気分を、10点満点で言うと何点くらい?
- この1週間で、一番ほっとした瞬間はいつだった?
近況の質問は、正しい答えがない質問を選ぶのがコツです。
点数や天気のように答え方が決まっていると、部下は考え込まずに答えられます。
場面2:今の仕事の手応えを聞きたいとき
- 今週一番時間を取られた仕事は何だった?
- 今の仕事の中で、一番手応えがあるのはどれ?
- 反対に、一番もやもやしている仕事は?
- 今の仕事量は、多い・ちょうどいい・少ないのどれに近い?
- 来週、一番大事にしたい仕事はどれ?
場面3:困りごとを引き出したいとき
- 今、進めるうえで止まっていることはある?
- 誰かに相談したいけれど、まだできていないことは?
- もし一つだけ仕事のやり方を変えられるとしたら、何を変えたい?
- 「これがなければもっと進むのに」と思うものは?
- 私が手伝えることがあるとしたら、どこだと思う?
「困っていることは?」と聞くと「大丈夫です」と返ってきやすいのは、困っていると認めることに抵抗があるからです。
「止まっていること」「変えたいこと」のように言い方を変えると、部下は弱みを見せる感覚なしに答えられます。
場面4:成長やこれからを話したいとき
- 半年前の自分と比べて、できるようになったことは?
- 次に挑戦してみたい仕事や役割はある?
- 1年後、どんな仕事ができるようになっていたい?
- 社内で「この人の仕事の仕方はいいな」と思う人は誰?どこがいい?
- 今、身につけたいと思っているスキルは何?
場面5:仕事を振り返りたいとき
- この前の案件で、一番うまくいったのはどこだった?
- それがうまくいったのは、何をしたから?
- もう一度やるとしたら、何を変える?
- 途中で一番迷ったのはどの場面だった?
- この経験から、次の仕事に持っていけそうなことは?
振り返りは、うまくいったことから聞き始めるのが基本です。
失敗から聞くと、部下は責められていると感じて口が重くなります。
振り返りの後に上司から伝える内容は、部下に伝わる褒め方と注意の仕方で紹介した「事実→影響→期待」の型が使えます。
場面6:上司やチームとの関係を聞きたいとき
- 私の関わり方で、もっとこうしてほしいことはある?
- 反対に、続けてほしいことはある?
- チームの中で、話しやすい人・話しにくい人はいる?
- チームの会議で、言いにくいと感じることはある?
- この1on1の時間を、もっと役に立つ時間にするには何を変えればいい?
関係についての質問は、部下にとって一番答えにくい質問です。
いきなり使うのではなく、1on1が何回か続いて、近況や仕事の話が自然にできるようになってから使います。
上司から先に「私も最近、説明が早口になっていると言われてね」と自分のことを話すと、部下も答えやすくなります。
4. 沈黙が生まれたときの扱い方

質問をしても、部下がすぐに答えず、沈黙が生まれることがあります。
多くの上司はこの沈黙が気まずくなり、質問を言い換えたり、自分の考えを話し始めたりします。
けれども、沈黙は会話が止まっている時間ではなく、部下が考えている時間です。
ここで上司が話し始めると、部下は考えるのをやめて、上司の話を聞く側に戻ってしまいます。
まずは10秒、待ってみる
質問をした後は、心の中でゆっくり10まで数えるつもりで待ちます。
上司にとっては長く感じますが、部下にとっては考えをまとめるのにちょうどいい時間です。
待っている間は、手元の資料やパソコンを見ずに、部下のほうを向いておきます。
待っても出てこないときの一言
しばらく待っても答えが出てこないときは、責めずに助け舟を出します。
部下:「……そうですね。大変というより、どこまで自分で決めていいのか分からないのが、ちょっともやもやしています」
上司:「なるほど。どの場面でそう感じた?」
沈黙を埋めてしまうと、部下は上司の言葉に「そうですね」と合わせるだけで終わります。
待ってもらえた部下は、自分の言葉で本当に気になっていることを話し始めます。
答えにくそうなら、質問を小さくする
それでも答えが出ないときは、質問が大きすぎる可能性があります。
「1年後どうなっていたい?」が答えにくそうなら、「今の仕事の中で、来月もっとやりたいのはどれ?」と、時間の幅と範囲を小さくします。
答えが出ないこと自体を、その日の1on1の失敗だと捉える必要はありません。
「次回までに少し考えておいてもらえる?」と預けておけば、次の1on1の入口になります。
5. 質問を「尋問」にしないための3つの注意
質問の数が増えるほど、1on1が尋問のようになってしまうことがあります。
次の3つに気をつけると、質問は部下が考えるきっかけになります。
- 「なぜ」を続けて使わない:「なぜできなかったの?」は責めているように聞こえる。「何があったの?」「どうすればできそう?」に言い換える
- 答えを聞いたら、すぐに助言しない:まずは「そう感じていたんだね」と受け止めてから、「どうしたいと思っている?」と部下の考えを聞く
- 上司が話す時間を短くする:1on1の中で上司が話している時間が長いと感じたら、質問を一つ減らして聞く時間を増やす
特に2つ目は、経験のある上司ほど陥りやすい落とし穴です。
部下が困りごとを話した瞬間に答えを言うと、その場は早く解決しますが、部下は次も答えをもらいに来るようになります。
受け止める聞き方のコツは、コーチングの傾聴スキルとは?13の傾聴するコツで詳しく紹介しています。
よくある質問
Q. 部下から「話すことがないので1on1をやめたい」と言われたら?
まずは、なぜそう感じるのかを聞きます。
報告の場になっていて意味を感じないのか、時間がもったいないと感じているのかによって、変えるべきところが違います。
そのうえで、時間を短くする、頻度を減らすなど、続けられる形を部下と一緒に決めるのも一つの方法です。
Q. 毎回同じ質問をしてもいいですか?
近況の質問のように、毎回同じものを使ったほうが変化に気づきやすい質問もあります。
「今週は何点?」と毎回聞いていれば、先週より点数が下がったときに「何かあった?」と自然に聞けます。
一方で、成長や関係の質問は、毎回同じだと答えが固定されやすいため、間を空けて使います。
Q. 1on1で仕事以外の話をしてもいいのでしょうか?
仕事以外の話は、部下が話したいと思ったときに聞けば十分です。
上司から家庭や私生活のことを踏み込んで聞く必要はありません。
近況の質問で部下が仕事以外の話をしたら、それを入口に話を広げる、くらいの距離感がちょうどいいでしょう。
Q. 管理職によって1on1の質がばらつくときは、どうすればいいですか?
質問の技術や沈黙の扱い方は、知識として読むだけでは身につきにくく、実際の会話で練習することで変わります。
管理職同士でこの記事の質問を使ってロールプレイをする、外部のコーチに1on1の一部を任せて上司の負担を減らすといった方法があります。
外部に任せる選択肢については、1on1を外部のコーチに任せるという選択肢で紹介しています。
まとめ:話すことがないのは、質問を変えるサイン
1on1で話すことがなくなるのは、部下に話題がないからではなく、質問が大きすぎるか、1on1が進捗確認の場になっているからです。
近況・今の仕事・成長・関係の4つの入口から一つを選び、小さく具体的な質問から始める。
答えが出なければ急いで埋めず、待ってから質問を小さくする。
次の1on1では、この記事の30問から1問だけ選んで、最初の質問を変えてみてください。
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