コラム

1on1を外部のコーチに任せるという選択肢|上司がやる1on1との違いと向いている会社

「1on1を始めたのに、部下が本音を話してくれない」。

制度として1on1を入れた会社ほど、こんな声が増えています。

原因の多くは、やり方より「話す相手が評価する上司本人である」という構造にあります。

そこで最近選ばれ始めているのが、1on1の一部を外部のコーチに任せるという方法です。

この記事では、上司がやる1on1と外部コーチの1on1の違い、向いている会社、導入の進め方を整理します。

この記事の要点・上司との1on1は「評価する人との面談」なので、部下が言えない話題が必ず残る
・外部コーチの1on1は、評価と切り離して本音・迷い・キャリアの話を引き出せる
・上司の1on1をやめるのではなく、外部の1on1と役割を分けて組み合わせるのが基本
・会社に返すのは個人の発言ではなく「組織の傾向」。この線引きが信頼の土台になる

1. 1on1が「形だけ」になる理由

1on1が形だけになるのは、上司のスキル不足より、立場の問題が大きいからです。

部下にとって上司は、評価を付け、仕事を割り振り、異動にも口を出す人です。

その相手に「実は転職を考えている」「この仕事に向いていないと思う」と話すのは、普通は難しいことです。

結果として、1on1の中身は業務の進み具合の確認に寄っていきます。

上司の側も、限られた時間の中で何十人もの部下と向き合い、自分の目標も追っています。

「聴く側」に徹する余裕がないまま、つい助言や指示をしてしまうのは自然なことです。

  1. 評価する人には言えない話題が残る:キャリアの迷い、人間関係、上司への不満など
  2. 上司が忙しく、聴く時間を守れない:リスケが続き、制度だけが残る
  3. 上司の力量で質がばらつく:うまい上司の部下だけが育つ

1on1の基本の進め方は、1on1ミーティングの進め方(無料テンプレ付)でも詳しく紹介しています。

2. 上司の1on1と外部コーチの1on1は何が違うか

上司の1on1と外部コーチの1on1の違いを比べた図。上司は評価する相手で業務の話が中心、外部コーチは評価と無関係で本音やキャリアの話ができる

一番の違いは、話す相手が評価と関係のない第三者であることです。

外部のコーチは部下の評価も人事情報も持っていないので、部下は利害を気にせずに話せます。

また、コーチは「聴く」「問いかける」ことを専門にしているため、部下自身が考えを言葉にするところまで付き合えます。

比べる点 上司がやる1on1 外部コーチの1on1
話しやすさ 評価する相手なので、言えない話題が残る 評価と無関係なので、本音・迷いを話しやすい
得意な話題 業務の進み具合、目標のすり合わせ、仕事の割り振り キャリア、やりがい、人間関係、言葉にできていない悩み
質のばらつき 上司の力量と忙しさに左右される 一定の質でそろえやすい
会社に残る情報 上司の頭の中に残り、共有されにくい 個人が特定されない形で「組織の傾向」として返せる

どちらが優れているという話ではありません。

上司の1on1は「仕事を前に進める場」、外部の1on1は「本人が考えを整理する場」と役割が違うのです。

3. 外部の1on1が向いている会社

外部の1on1が特に効くのは、上司と部下の距離をすぐには変えにくい会社です。

若手や中堅の離職が続いている

辞める直前まで本音が上がってこない会社では、評価と切り離した場があるだけで、早めに迷いを拾えます。

「辞めたい」の手前にある「このままでいいのか分からない」を話せる相手がいることが大切です。

管理職がプレイングマネージャーで忙しい

自分の数字を持つ管理職に、全員分の丁寧な1on1を求めるのは現実的ではありません。

聴く部分を外部に任せれば、上司は業務の1on1に集中できます。

管理職の育成が追いついていない

マネジメント経験の浅い上司が多い時期は、1on1の質がどうしてもばらつきます。

外部の1on1で部下の土台を支えながら、並行して管理職の関わり方を育てていく、という順番が取れます。

管理職の側の関わり方については、管理職のためのコーチング入門も参考にしてください。

POINT・「本音が上がってこない」「上司が忙しい」「上司の育成が追いつかない」のどれかに当てはまるなら検討の価値あり
・逆に、少人数で上司と部下の信頼が厚い職場なら、まず上司の1on1を整えるほうが先

4. 導入するときに決めておく3つのこと

外部コーチの1on1を導入する前に決める3つのこと。会社への報告範囲、上司との役割分担、頻度と期間

外部の1on1は、始める前の線引きで成否が決まります。

特に次の3つは、導入前に会社と部下の両方へはっきり伝えておきましょう。

① 何を会社に返し、何を返さないか

個人の発言内容をそのまま会社に報告すると、部下は二度と本音を話さなくなります。

会社に返すのは「どの部署でどんな悩みが多いか」といった、個人が特定されない傾向までにするのが基本です。

ただし、心身の不調や安全に関わる内容など、例外として扱う場合の取り決めも事前に決めておきます。

② 上司の1on1とどう分けるか

外部の1on1を入れても、上司の1on1をなくす必要はありません。

「業務の確認は上司」「キャリアや悩みは外部」のように、話題で役割を分けると部下も迷いません。

③ どのくらいの頻度で続けるか

1回きりでは、部下が「この人には話していい」と感じるところまで届きません。

月1回程度を数か月続け、関係ができてから効果を見るのが現実的です。

決めること 決め方の例
会社への報告範囲 個人の発言は返さない。部署ごとの傾向だけを定期的に共有する
上司との役割分担 業務と目標は上司、キャリア・悩み・人間関係は外部コーチ
頻度と期間 月1回・30分を目安に、まずは数か月続けて変化を見る

5. 外部の1on1と一緒に考えたい「上司の関わり方」

外部の1on1は、上司の代わりではなく、上司の関わりを補うものです。

部下が外部の場で考えを整理できても、職場に戻ったときの上司の一言で、また口を閉ざしてしまうことがあります。

そのため、外部の1on1と並行して、管理職側の「伝え方」「任せ方」「褒め方・注意の仕方」を整えていくと、効果が職場に残ります。

上司の関わり方の考え方は、コーチングとリーダーシップの違いでも整理しています。

よくある質問

外部の人に部下を任せると、上司と部下の関係が薄くなりませんか?

役割を分けておけば、薄くなることはありません。

業務や目標の話は引き続き上司が行い、外部の1on1ではキャリアや悩みなど上司には話しにくい話題を扱います。

部下が考えを整理してから上司と話せるようになるため、上司との会話がかえって具体的になることもあります。

1on1で話した内容は、会社に伝わりますか?

個人の発言内容をそのまま会社へ伝えないのが基本です。

会社に返すのは、個人が特定されない形の「組織の傾向」までにします。

この線引きを導入前に部下へ説明しておくことが、本音を話してもらうための前提になります。

何人くらいの会社から検討できますか?

人数より、「本音が上がってこない」「上司が忙しくて1on1が続かない」といった困りごとがあるかどうかで判断するのがおすすめです。

まずは一部の部署や若手社員から始め、反応を見て広げる方法もあります。

オンラインでも効果はありますか?

オンラインでも十分に行えます。

移動がないぶん時間を取りやすく、拠点が分かれている会社や在宅勤務の多い会社でも続けやすいのが利点です。

まとめ:1on1は「誰とやるか」で中身が変わる

1on1がうまくいかないとき、やり方を変える前に「誰と話す場なのか」を見直してみてください。

評価する上司との1on1と、評価と切り離した外部の1on1は、役割が違います。

両方をうまく組み合わせることで、部下の本音が早めに上がり、上司は仕事を前に進めることに集中できます。

FIRST COACHでは、管理職向けの1on1研修をはじめ、組織の状況に合わせた企業向けコーチングをご相談いただけます。

「うちの場合はどう組めばいいか」から、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の編集者
加藤 巧海
加藤 巧海(かとう たくみ)
株式会社FIRST COACH 代表取締役。認定プロコーチ。エグゼクティブ・コーチングを中心に、個人と組織のリーダーシップを高める支援をしている。
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